9月25日号 『Fニッポン 第8戦』

 案の定、「週刊大串」の更新は忙しさの中でピタリと止まり、止まったら止まったでそれが重荷となって近寄るのが自分で億劫になるという、独身一人暮らしの部屋が汚れていくのとまったく同じ経緯を経て、週刊が月刊となり月刊が季刊となり、とうとう1年も間が空いてしまった。幸いだったのは、サーバの中ではホコリやチリが積もらず、生ゴミも溜まらないことだった。しかも1年経ってシレッとこんな原稿をアップすると、パッと見にはそこそこマジメに更新しているように錯覚を招くというワザも効く。ということで、週刊は無理にしてもなんとかもう少し更新頻度を上げようと思い、復帰する次第だ。

 で、いざ復帰と思うと、あれこれ書かなくてはいけないことが山ほどあって、どこから手をつけていいのか呆然とするばかり。で、結局は書き散らしやすいところで、先日取材してきたばかりの全日本選手権フォーミュラ・ニッポン第8戦について、報告しておこうと思う。そういえば、ここでレースの話題は初めてだ。せっかく週刊を標榜するなら、意地を張らずに、たまには取材レポートを書いていいかもしれない。

 ブリヂストンは、このレースから来季移行仕様するソフト・コンパウンドタイヤの先行開発版を投入した。だが結局は「なんとか交換なしでも1レースは走りきれる」レベルのソフト化であり、少々拍子抜けした。レースは、本山哲とチームインパルがきわめて高度な仕事をして優勝を勝ち取った。おそらく各チームとも、レース中盤でのタイヤ交換を予定していたはずなのだが、公式予選で4位と厳しい位置にいた本山は、スタートでファーマンの前に出られないと見るや、なんと4周目にピットに飛び込んだ。

 新ソフトタイヤでのロングランテストは誰も経験しておらず、そのタイミングでピットインして残り58周を走りきろうという作戦は、あまりにもリスクが大きかった。実際、チームでも意見が分かれたという。おもしろいのは星野一義や金子豊という親分たちが早すぎる、と思ったことだ。ただ二人は「現場の若い人間たちの決断にまかせよう」と自分たちの意向を飲み込んだ。インパルは随分変わった。

 本山はさらに、タイヤ交換直後のラップで、1分15秒918という、結局このレースでのファステストラップとなるタイムを叩き出す。この突進なしに、本山の勝利はなかった。このラップがあったからこそ、周囲のチームが本山とインパルにつられて、本来の予定を変え、早めのタイヤ交換に切り替えてしまったのだ。冷静に考えれば首位を走っていたラルフ・ファーマンは、じっくりと構えてレース終盤でタイヤを交換し、そのころにはタイヤが消耗しているはずの本山にダメ押しをすれば良かった。だがいきなり1分15秒台で本山が走ってしまったものだから、タイヤ交換の際に本山が一旦前へ出てしまうかも知れない、そうなったらいくらタイヤがフレッシュでもMINEのコースレイアウトを考えたとき前には出られなくなる、と考えたのだろう。

 結局、ファーマンは7周でピットに入りタイヤ交換をした。しかし、タイヤ交換を終えてコースに復帰したとき、不運にもギリギリで本山に先行されてしまった。せめてここでは前に出ておかなければならなかった。本山自身、ここでファーマンの前に出られるとは思っていなかった、と言っている。だが1分15秒台の突進が効いた。一方、ファーマンはタイヤ交換の時期を狂わされた挙げ句、首位を守るために敢えて変更したタイヤ交換時期だったのに、先頭を守ることもできないという二重の失敗を喫した。この時点で勝負がついたように思う。

 いいレースだった。だが、水面下の戦略あってのおもしろさで、一般的な見え方がどうであったかには自信がない。今回の取材では、レースそのものの取材よりも、今後のFニッポンをどう伝えていくかについての仕込み仕事ばかりやっていたので、なおさら不安になる。しかし、それにしてもせっかくタイヤを変えるなら、もう少しソフトへ振れないものか。