続 サンダーボルトF1の車体番号に関する徹底考察 逗子通信






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解説:
読者であるまつざき氏の指摘を受け、2010年6月の段階で再調査を行い作成した原稿。(以下本文)

本文:
まつざき氏の指摘を受けて、SV01改のデザインについて再調査にかかりました。数少ない当時の「画像」(笑)を眺めると、SV01改がモナコGP出場のためニースに送られ、おそらくは通関倉庫でトム・カサハラが組み立てて周囲を慌てさせた際、特にカサハラが車体の下から顔を出す画像で、サイドポッド下にはベンチュリートンネルが存在せず水平のフロアがあることが確認できます。またサイドポッド上面のパネルもモノコック側がえぐれており、ベンチュリーを構成しようとした意志は感じられません。この時点で、トム・カサハラは、SV01改を最新の「ウイングカー」としてデザインはしていないというのが真相のようです。

サイドポッド後端、リヤタイヤ前のスパッツの内側はベンチュリー状の通気構造になっています。これは、サイドポッド内の空気、つまりラジエター及びオイルクーラーの冷却気を引き抜くための構造だったのでしょう。ただしせっかくの通気構造部分にリヤブレーキ冷却用通気ダクトを通すという無駄が行われています。これはまつざき氏の指摘通り、モナコGP搬入後の整備風景から確認できます。これではサイドポッド内の空気を引き抜くという機能も十分果たすことはできなかったでしょう。

その後SV01改は第10戦イギリスGPでマイナーチェンジを受け、リヤのスパッツ形状が変更になっています。このとき受けた改造の詳細は明らかではありませんが、カサハラは、ロータス78のウイングカーとしての威力を目の当たりにしているはずです。それに対抗するためのマイナーチェンジではあったはずですが、では果たしてフロアはどうなっていたのか。

イギリスGPのクラッシュ時、ラフィーに追突しレガゾーニがそこへ突っ込んでケン・アカバのマシンを跳ね上げた瞬間の画像が記録されていますが、見方によってはリヤバルクヘッドより後方のフロアがわずかに跳ね上げられているようにも見えますが、他の角度からの画像では、水平面がそのまま続いているようにも見えます。もし跳ね上げがあったとしても初期のディフューザーに似た平面的なもので、決して十分なベンチュリー効果は得られなかったでしょう。

ではイギリスGPでのマイナーチェンジがなぜ行われたのか。これはおそらく、SV01改で行われたサイドラジエター化が上手くいかず、冷却効率を上げる必要に迫られていたからではないでしょうか。斜めに配置されていたオイルクーラーがサイドポッド内の空気流を阻害しウォーターラジエターの効率が上がらなかったため、オイルクーラーを進行方向と並行に起きサイドポッド内の空気流量を増やしたうえ、スパッツ構造も変更して引き抜き効果を増やした、というのが真相でしょう。

SV01改の発表時、カサハラは「ロータスの方がこっちをマネしたのや!」とコメントしていますが、これは少々虚勢が過ぎたものだったように思われます。サイドラジエター化によって重量配分が改善され、SV01改は戦闘力が上がったものの、旧型のモノコックを使っている限りウイングカー化は困難だったのでしょう。それを早期に気づいたからこそカサハラはSV01モノコックでの無理なウイングカー化はあきらめSV01改を重量配分改善に絞ってデザインする一方、水面下で次期マシンSV11の開発に取りかかっていたのかもしれません。

しかし後継機であるSV11は、やはりイギリスの技術力に頼って開発された車体だったとわたしは推測しています。SVEの組織規模を考えると、SV01改を開発しながら新機種を並行開発するのは無理で、事実上の外注をせざるをえなかったはずです。残念ながら当時日本国内にあったSVEの開発力、技術の進化への対応力には限界があったでしょう。そして、こうした外国技術依存は、その後の日本のレース界が抱えることになる宿命となります。

結論としては、おそらくSV01改はウイングカーではなかった、というまつざき氏の説が妥当だとわたしも考えるようになりました。

なにぶんにも、限られた資料しか残されていない車両ではありますが、今後とも読者の皆様には新解釈や新発見などお寄せいただければ幸です。今回はまつざき様に解釈変更のきっかけをいただきました。どうもありがとうございました。(以上本文)