箸を持つ
全日本箸道普及会公式サイト
箸の持ち方が気になる。別にわたし自身は食事のマナーにうるさい方ではない。いやむしろ不作法で行儀が悪い。だが箸の持ち方だけは気になる。おそらくわたしは、箸の持ち方自体が気になっているのではないと思う。

わたしが気にするのは、箸の持ち方が矯正できない人間の感性である。ニッポン国に暮らす者として、好き嫌いにかかわらず箸を使う機会が多いことに異を唱える人間はいるまい。これだけの機会に直面しながら自分の箸の持ち方を省みない人間が、果たしてこの広い社会の中で自分のあり方を検証し社会と望ましい関係を確立することができるものかどうか。

できればこの先いいことがないかなと期待しつつ妙齢の娘と食事をしているとき、つい相手の箸の持ち方がデタラメなことに気づいたりすれば、わたしは確実にあらゆる面で萎える。おそらくこの娘は自分が外からどう見えているかを考えたことはないのだろう、当然そういう教育も受けてはこなかったのだろう、そもそも箸の持ち方をきちんと躾ることができない親に育てられたのだろう、ということは外見は飾り立ててはいるけれどもきっと履いている下着のゴムは伸びきったりしているのだろう、などとわたしの妄想は止まらなくなる。

もちろんわたしだって箸の持ち方などで人間の価値が本当に計れるなどとは思ってはいない。だが、こんな妄想はしたくないのだ。だからというわけではないが、箸は正しく持ってもらいたい。そのためにわたしは立ち上がる。箸は正しく持つべきだ。


                  第1章 『正しい箸の持ち方を学ぶ』 

           第2章 『箸の持ち方コレクション』